自己肯定感が低い人をどうほめる?~心と体のつながりから見た自己肯定感の話
整骨院で患者さんと接していると、体の不調だけでなく、心のバランスが身体に影響していると感じることがよくあります。
どれだけ姿勢を整えても、心が緊張していたり、自分に自信が持てなかったりすると、筋肉は常に力が入り、呼吸も浅くなってしまいます。
最近、ある学生さんの話を聞きました。
その子はとても絵が上手で、誰が見ても「才能がある」と思うほどのイラストを描きます。
でも、周りが「すごいね」「上手だね」とほめると、いつも「そんなことないですよ」と否定してしまうのです。
実は、こうした「自己肯定感が低い子」ほど、ほめ言葉を素直に受け取ることが苦手です。
「認められたら次に失敗できない」「期待に応えられないかもしれない」――。
そんな不安から、自分を守るために“否定”という反応をしてしまうのです。
そして正直に言うと、私自身も同じタイプです。
患者さんから「先生すごい」「ゴッドハンドやな」なんて言われることがありますが、実はとても苦手だったりします(笑)
うれしい反面、どこか落ち着かなくて、「そんなことないですよ」とつい口に出てしまいます。
照れくさい気持ちもありますが、心の奥では「自分なんかが褒められるなんて」とブレーキをかけているのかもしれません。
■「ほめ方」を変えると、心が少しずつ変わる
こうしたタイプの人に対しては、ほめ方の方向を少し変えるだけで、心の受け止め方がまったく違ってきます。
たとえば「すごいね」「上手だね」という“評価”の言葉ではなく、
「この色づかい、すごく優しいね」
「線の流れがやわらかくて、見てて落ち着く」
といった観察の言葉に変えてみるのもいいかもしれません。
評価ではなく、「感じたままを伝える」。
「あなたのことをちゃんと見ているよ」というメッセージが伝わると、防御的にならず、心を開きやすくなります。
また、「あなたらしい」「この雰囲気、あなたにしか出せないね」といった言葉も効果的です。
比べられることに敏感な人ほど、「唯一無二の自分」を感じられる言葉が支えになります。
■「結果」よりも「過程」を認める
整骨院での施術も同じように感じます。
姿勢がすぐには変わらなくても、「今日は呼吸が深くなった」「前より動きがスムーズでしたね」など、少しずつの変化を見つけて伝えることが大切です。
子どもに対しても、「上手に描けたね」より「今日は集中してたね」「描いてるとき、すごく楽しそうだったね」という言葉が、“自分の存在が認められた”という安心感を生みます。
その安心感が、体の緊張をゆるめ、呼吸を整え、姿勢や表情にまで変化をもたらします。
■「ほめる」と「整える」は似ている
整骨院での施術は、痛いところを強く押すのではなく、必要な部分に、ちょうどいい刺激を与えることが大切です。
ほめ方もそれと同じで、「強く押す」と相手は身を固くしてしまう。
けれど、「必要な部分に、やさしい言葉をかける」と、心は自然と整っていきます。
人は、自分を肯定できるようになると、体にも変化が現れます。
肩の力が抜け、表情が柔らかくなり、呼吸も深くなる――。
それは整骨院の現場で、日々感じる“心と体のつながり”そのものです。
■まとめ
「自己肯定感が低い子」に必要なのは、強い励ましではなく、安心して自分を出せる環境です。
否定しても受け止めてくれる、見守ってくれる。
その積み重ねが、自分を信じる力になります。
私も、褒められて戸惑うことはありますが、
「ありがとう」と素直に受け取る練習をしながら、
患者さんにも“安心して自分を認められる”時間を提供していきたいと思っています。

