「整う」とは、“安心”を取り戻すこと ― ポリヴェーガル理論からみた自律神経の話
最近、「なんとなく疲れが抜けない」「常に気が張っている気がする」という方が増えています。
施術をしていると、身体のこわばりや呼吸の浅さに加えて、どこか“リラックスできない心の状態”を感じることがあります。
このような状態に深く関係しているのが、自律神経の働きです。
自律神経は、アクセル役の「交感神経」とブレーキ役の「副交感神経」から成り立ち、活動と休息のバランスを取ることで体を守っています。
ですが近年、もう一歩踏み込んだ新しい理解として注目されているのが、アメリカの神経生理学者スティーブン・ポージェス氏が提唱した
「ポリヴェーガル理論(Polyvagal Theory)」 です。
この理論では、副交感神経の中にも2つの系統があり、ひとつは“危険を感じて動けなくなる”古い迷走神経(背側迷走神経系)、もうひとつは“安心・安全を感じるときに働く”新しい迷走神経(腹側迷走神経系)とされています。
つまり、「副交感神経=リラックス」ではなく、“安全を感じられるときだけ”真のリラックス(腹側迷走神経優位)が訪れる という考え方です。
整骨院で施術を受けたときに、「体が軽くなった」「眠たくなった」「不安が和らいだ」と感じるのは、実は筋肉だけでなく、この“神経の安全スイッチ”が入った証拠でもあります。
人の体は、危険を感じると交感神経が優位になり、筋肉が緊張し、心拍数が上がり、思考も警戒モードに入ります。
逆に、「ここは安心だ」「信頼できる」と感じた瞬間、腹側迷走神経が働き、呼吸が深くなり、血流が改善し、体の自然治癒力がスムーズに動き出します。
施術というのは、単に筋肉をほぐす作業ではありません。
手の温もり、呼吸のリズム、言葉のトーン、空間の明るさや音の静けさ――
それらがすべて「安全の合図」となって、脳に安心を伝えています。
それこそが、ポリヴェーガル理論の本質です。
次回はポリヴェーガル理論の本質である「腹側迷走神経」と「背側迷走神経」について深堀したいと思います。


